レーザー白内障手術

大宮七里眼科は日本初のレーザー白内障手術に成功しました

2012年6月に当院の山﨑健一朗院長が日本国内で初めてのレーザー白内障手術に成功しました。

フェムトセカンドレーザー導入の手術は、白内障手術技術としてここ20年で最も革新的な進歩です。今後次第に普及していきますが、まだ日本ではごく限られた施設でしか行われていません。
大宮七里眼科ではAlcon社のレーザー白内障手術機器、アルコン社のLenSx(レンズエックス)を用いています。

大宮七里眼科でのレーザー白内障手術の実際の映像

大宮七里眼科の最先端レーザー白内障手術設備器機

フェムトセカンドレーザー白内障手術
超短時間パルスの精密な切開

メスを使わない最先端技術のレーザー白内障手術

大宮七里眼科で患者さんにお見せしているレーザー白内障手術解説ビデオ

従来の白内障手術では、角膜などの組織を切開する際に金属製のメスを使用していました。しかし、フェムトセカンドレーザー白内障手術では、メスのかわりに光の一種であるレーザーで組織を切るため、基本的にメスを使いません。
金属であるメスと、光であるフェムトセカンドレーザーでは、組織を切るメカニズムがまったく違います。メスを使った手術では刃が直接組織に触れることで切りますが、レーザーは直接組織に触れずに切ることができる、ということです。

直接組織に触れずに組織を切開するフェムトセカンドレーザー白内障手術の登場は、長い白内障手術の歴史の中でも、最も画期的な革新の一つです。
フェムトセカンドレーザーの「フェムト」とは1000兆分の1を表す単位です。
一方、「セカンド」は秒のことです。つまりフェムトセカンドレーザーとは、1000兆分の1秒という想像できないほどの短時間で照射する、最先端テクノロジーを使ったレーザーです。
レーザーは短時間の単位で照射すればするほど、高い精度での制御が可能となります。小さいもの、薄いもの、細かいものの精密な切開や加工が正確にできるのです。
また、メスで内部の組織を切るためには、その外側の部分を切らなければ内部まで到達できませんが、フェムトセカンドレーザーでは外側の部分を切らずに内側だけを切ることが可能です。組織に触れることで切るメスによる手術では、角膜切開を先にしなければ水晶体の前嚢を切ることはできませんが、レーザー白内障手術では、目の外側の組織である角膜を切る前に、その内側にある水晶体の前嚢の切開を行います。そのため、目の圧を一定に保ったままの状態で水晶体の前嚢を切開できるので、より正確な切開をすることが可能なのです。人の手による、メスを使用した手術では、このような順番で手術をすることは不可能です。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

日本人医師で初のレーザー白内障手術3000症例達成

大宮七里眼科・山﨑健一朗院長は2012年6月に日本で最初にレーザー白内障手術を開始し、2019年11月に3000例を達成した記念として表彰をされました。

レーザー白内障手術の流れ

1大宮七里眼科ではレーザー手術もクリーンルームで行います。

レーザー白内障手術は感染症の危険の少ないクリーンルームの手術室で行います。超音波水晶体乳化吸引術を行う手術と同じ大型手術室にレーザー白内障手術器機を設置していますので、患者さんはレーザー白内障手術と超音波水晶体乳化吸引術の間に歩く必要はありません。患者さんには背もたれの倒れる眼科手術用の椅子に座っていただいて、電動の背もたれを倒して手術を行います。背もたれは180度フラットにするわけではなく、わずかに腰の曲がった、楽な状態で行います。したがって背中の曲がっている方や重度の腰痛をお持ちで、背中を伸ばしてまっすぐ上を向く姿勢を取ることができないという方でも安心して手術を受けることができます。今まで私がレーザー白内障手術を行った方の中には90歳以上の高齢の方や、身長の低い方などもいらっしゃいましたが、姿勢がとれないことでレーザー白内障手術ができなかった人は一人もいませんのでご安心ください。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

2点眼麻酔をしてレーザー白内障用のキャップを目に装着

点眼麻酔をしてレーザー白内障用のキャップを目に装着

麻酔は点眼薬で行います。注射はいっさい行いません。手術中は痛みを感じることはありません。まぶたを閉じないよう、まぶたを開ける器具をかけ、眼球にレーザー白内障手術を行うためのキャップをつけます。キャップがレーザー白内障手術中に外れないよう、少し圧がかかりますが、強い圧迫感を感じることはありません。また、レーザー白内障手術中に器具などが見えることもありません。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

3OCTスキャンで目の構造を立体的にデータ化

レーザー白内障手術器機はOCTを使って目のさまざまな部位を、多角的にスキャンします。OCTスキャンによって得られた患者さんの目の画像データをコンピュータにて解析します。OCTスキャンはキャップを装着して1~2秒で行うことができます。レーザー白内障手術器機には、眼科医の設定した角膜、水晶体前嚢、水晶体核分割のパターンのデータが事前に入力されていますので、それらのデータをOCTにて計測・解析した画像データにあてはめることで、実際に行う角膜切開、水晶体核分割、水晶体前嚢切開の位置や深さなどを解析、決定します。このようにして、レーザー白内障手術では眼科医の思い通りの切開の位置、角度、深さの設定を、一人ひとりの患者さんの目に合わせて行うことができます。

OCTスキャンによってすべての設定を終えた後、いよいよフェムトセカンドレーザー照射を開始します。レーザーの照射時間は約30秒と、非常に短い時間で終わります。レーザー照射は水晶体前嚢切開、水晶体核破砕、角膜切開の順番に行います。レーザー照射中に痛みを感じることは全くありませんので、ご安心ください。

レーザー白内障手術を行なうためのキャップ取付イメージ

レーザー白内障手術を行なうためのキャップをつけるところレーザー白内障手術機器・LenSx(レンズエックス)ではキャップは内側のソフトコンタクレンズを介して目に装着されるため、痛みを感じることはありません。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

レーザー白内障手術の実際について

1水晶体の前側をレーザーで切開

水晶体の前側の部分である前嚢をフェムトセカンドレーザーで円形に切開します。レーザー白内障手術では、切りたい前嚢の半径を、ミクロン単位で設定することができます。また切る円形の切開の中心を、正確に角膜の真ん中に合わせることができます。レーザー白内障手術では、眼科医の手による手術に比べてこの水晶体前嚢切開の精度が上がるため、眼内レンズをより正確に中心に挿入することができることが医学論文で発表されています。

データをもとにレーザーで前嚢切開

上方:下のデータをもとにレーザーで前嚢切開をおこなっているところ。下方の画像:水晶体前嚢のOCTスキャン画像
この画像をもとに前嚢切開の深さ、位置を決定する。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

2レーザーで水晶体の中心部分を細かく破砕

前嚢切開後、水晶体の中心部分をレーザー照射により細かく砕きます。レーザー白内障手術器機は、同心円状、放射状、サイコロ状などさまざまなパターンの破砕の形状をプログラミングすることができ、眼科医はそれぞれの症例に最適なパターンを選ぶことができます。レーザー白内障手術による水晶体破砕を行った場合には行わない場合に比べて、水晶体乳化吸引術で使用する超音波量を43%、超音波時間を51%も減らすことができることが医学的に実証されています。超音波乳化吸引術を行う前にフェムトセカンドレーザーで水晶体を砕くことができます。レーザー白内障手術では超音波水晶体乳化吸引術で使用する超音波量を減らせることにより、超音波による目の組織、特に角膜内皮へのダメージを減らすことができます。

フェムトセカンドレーザー

フェムトセカンドレーザーで水晶体をサイコロ状、および放射状に分割している様子

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

3レーザーで角膜を切開

手による手術では、最初にメスで角膜を切開しますが、レーザー白内障手術では、メスを使わずにレーザー照射で角膜を切開します。このレーザー白内障手術による角膜切開もまた、水晶体核破砕や水晶体前嚢切開と同様にOCT(光干渉断層計)による断面図のデータをもとに行います。レーザー白内障手術による角膜切開では、角膜の厚みや角度を測り、術前に眼科医が設定した切開の長さ、深さを患者さん一人ひとりに合わせて行います。それにより、通常のメスによる切開と比べて、より正確な形や大きさで切開することができます。そればかりでなく、レーザー白内障手術による創口の断面図はまっすぐではなく、立体的な形にも設定できます。

レーザーによる角膜切開の断面(矢印の部分)

レーザーによる角膜切開の断面(矢印の部分)
3段階の面で立体的に切開している。眼科医の意図通りに長さや深さ、角度を設定できる。リアルタイムOCTによる計測と解析を瞬時に行い、切開の位置や大きさを設定できる。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

4レーザーが終わったら超音波水晶体乳化吸引術へ

レーザー白内障手術の工程をすべて終えたらすぐにレーザー白内障手術用のキャップを外します。そのまま患者さんの椅子を移動して、超音波水晶体乳化吸引術を行います。このプロセスは、手で行う手術と同じ超音波乳化吸引術器機を使って行います。超音波水晶体乳化吸引術では超音波で水晶体を破砕しながら、白内障で濁った水晶体を吸引していきます。レーザー白内障手術を行っている場合には、すでにレーザーにてある程度水晶体を破砕した状態から開始するので、ここからの手術時間が通常の手術よりも短くなります。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

5眼内レンズを挿入

すべての水晶体核を乳化吸引したのちに、角膜の切開部分から、水晶体を包んでいた嚢の中に眼内レンズを入れます。眼内レンズも日々進歩をしています。眼内レンズは現在ではほぼすべてのレンズが折りたたみ式となっています。これにより従来の折りたたみでない眼内レンズに比べて、より小さな角膜切開で挿入することができます。さらに眼内レンズの挿入器具も進歩をしており、現在ではインジェクターと呼ばれる器具を使用して眼内レンズを挿入します。インジェクターと呼ばれる筒の中に眼内レンズを丸めて入れ、インジェクターの先端をごく小さい角膜切開部から目の中に挿入して、丸めた眼内レンズを入れます。眼内レンズはすぐに目の中で開き、水晶体の袋の中で固定されます。なおレーザー白内障手術で水晶体前嚢切開を行った場合では、そうでない眼科医の手による手術よりも、より正確に中央に眼内レンズを固定でき、目の度数もより目的通りに合わせられることが、医学論文によって報告されています。これもレーザー白内障手術の大きなメリットの一つです。

インジェクターを使用して眼内レンズを挿入

インジェクターを使用して眼内レンズを挿入しているところ
右側の細い筒がインジェクター。中央の丸いものが眼内レンズ。小さな角膜切開からインジェクターを入れることができるので、眼内レンズのサイズよりも小さな創口から眼内レンズを挿入することができる。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

レーザー白内障と通常の手術の比較

  通常の白内障手術 レーザー白内障手術
手術の手法 眼科医の目と手で行う OCTで計測し、レーザーで切開
角膜切開 メスを使用 角膜を立体的に計測し、長さ・角度を計算して設計
水晶体乳化吸引術 通常の手術よりもレーザー手術のほうが超音波量が少なくすみ、角膜内皮へのダメージが少ない
水晶体前嚢切開 針やピンセットのような器具で行う レーザーで正確な形、位置、半径で行うため、眼内レンズの傾きが少ない。進行した白内障でも安定
手術の順序 角膜切開→水晶体前嚢切開→水晶体破砕。角膜を先に切ることにより、目の圧が不安定な状態で前嚢切開を行う 水晶体前嚢切開→水晶体破砕→角膜切開。角膜切開の前に前嚢切開を行うので目の圧を保ったまま安定した状態で前嚢切開を行う。
その他 - 過熟白内障など、困難症例も安定した切開が可能

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

01眼内レンズの固定が正確になる

手による手術では、基本的にすべてのプロセスにおいて、眼科医の「目測」と「経験則」がたよりになります。白内障手術は顕微鏡で拡大して見ながらの手術とはいえ、一見すると正確に見えても、わずかな誤差は避けられません。
特に、白内障手術でもっとも難しいとされる水晶体前嚢切開を行うときには、通常の白内障手術では眼科医が顕微鏡をのぞきながら、針やピンセットのような器具を使って行います。人間の目測と人間の手による手術で完全な真円で切開することは難しく、半径もまちまちでした。場合によって円形にならずに不完全な状態となることもありました。位置も目測で行っているために正確性に欠く場合がありました。円形に切開できても、実際の半径はわからないまま手術を進める必要がありました。
それに対してレーザー白内障手術では、まず、前述の通り目の計測や解析を機械で正確に行えることが、手で行う手術とは大きく違います。この計測や解析は、OCT (Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)という赤外線を用いた画像計測装置にて行います。
赤外線は、可視光線では写し出せない場所にも到達します。OCTは反射してきたデータを解析することで、画像化します。レーザー白内障手術では、OCTによって角膜の前面から水晶体の後面までのすべての目の構造の形状と位置を精密に測定することで、切開の位置や大きさを正確に設定することができるのです。
その設定をもとに、切開を光線であるレーザーが行いますので、ミクロン単位で正確さを極めることができます。つまり、眼科医の理想通りに切開できるのです。難易度の高い前嚢切開も、あらかじめ計測された前嚢のカーブに合わせて行われ、ほぼ真円での切開が可能です。実際に人の手による手術に比べて、レーザー白内障手術では水晶体前嚢切開の真円性が有意に高いことが医学論文で実証されています。
*手による手術と、レーザー白内障手術では、フリーハンドで丸を描くのと、スタンプで丸を押していくくらいの違いがあります。どんなに経験を積み腕が確かな医師でも、水晶体前嚢という凸型の薄い膜の上を直径約5mmのまったくの真円で切ることは、まず不可能です。
水晶体前嚢切開を真円で切開でき、かつ正確に水晶体の真ん中で切ることができると、眼内レンズをより正確に真ん中に挿入でき、眼内レンズが上下左右にずれたり、傾いたりすることを、通常の手による水晶体前嚢切開よりも少なく抑えることができます。つまりレーザー白内障手術は、人の手による手術よりも理想の位置に眼内レンズを固定することができます。このことも医学論文で実証されている事実です。

参考文献

*Femtosecond laser capsulotomy and manual continuous curvilinear capsulorrhexis parameters and their effects on intraocular lens centration ,Kranitz K, Takacs A, Mihaltz K, Kovacs I, Knorz MC, Nagy ZZ. ,J Refract Surg. 2011 Aug;27(8):558-63

フェムトセカンドレーザー白内障手術

大宮七里眼科でのフェムトセカンドレーザー白内障手術の手術後の写真。矢印は水晶体前嚢切開のエッジ。前嚢切開が完璧な正円で、目の中心で切開が出来ている。眼科医の手による手術では、このような正円の切開は不可能。これがフェムトセカンドレーザー白内障手術の最大のメリット。

手による水晶体前嚢切開

手による水晶体前嚢切開。ピンセットや針を使って、医師が目測で行う。真円で切り抜くことが理想だが、狭い空間で小さな角膜切開の傷口から行うため、実際には真円で切り抜くことは難しく、半径や位置も誤差が生じやすい。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

02角膜へのダメージが少ない

水晶体超音波乳化吸引術でもっとも懸念すべきは、角膜内皮細胞の損傷です。角膜のもっとも内側にある角膜内皮細胞は人体のなかでも特殊な性質をもち、一度ダメージを受けると再生ができません。角膜内皮細胞は角膜のポンプのような機能を持っており、角膜内の水分の量を調節しています。したがって角膜内皮細胞数が一定以上減ると、角膜のポンプ機能が低下してしまいます。この超音波を手術中にたくさん使うと、結果的に角膜内皮にダメージをあたえることがたくさんの医学論文で報告されています。

参考文献

Murano N, Ishizaki M, Sato S, Fukuda Y, Takahashi H. Corneal endothelial cell damage by free radicals associated with ultrasound oscillation. Arch Ophthalmol. 2008;126:816-821. doi:10.1001/archopht.126.6.816など) Epub 2012 May 16)

よって白内障手術中の超音波の使用量は必要最低限であることが望ましいのです。
しかし、レーザー白内障手術は大きなメリットを持っています。それは「04 レーザー手術が終わったら超音波水晶体乳化吸引術へ」で述べたとおり、レーザー白内障手術を行った場合には行っていない場合よりも、43%もの超音波量を減らし、51%もの超音波時間を短縮することができるということです。(参考文献は前述)
その結果、レーザー白内障手術を行うと、行わない手術に比べて角膜内皮へのダメージを減らすことができることが、医学論文によって報告されています。

参考文献

Central corneal volume and endothelial cell count following femtosecond laser-assisted refractive cataract surgery compared to conventional phacoemulsification. Takacs AI, Kovacs I, Mihaltz K, Filkorn T, Knorz MC, Nagy ZZ., J Refract Surg. 2012 Jun;28(6):387-91. doi: 10.3928/1081597X-20120508-02.

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

03レーザー白内障手術は角膜の傷口の長さ、深さ、角度を細かく設定できる

レーザー白内障手術ではミクロン単位で長さ、深さ、角度を事前に設定しておき、手術時にOCTで個々の症例の角膜の厚さやカーブを測定して正確な角膜切開を行うことができます。
また、メスは直線的にしか切れませんが、レーザーは角度を変えながら立体的に切ることができます。

メスでの角膜切開と、レーザーの切開の断面比較

メスでの角膜切開と、レーザーの切開の断面比較

写真左は実際の手術でのメスによる角膜切開の術後写真、写真右は実際のレーザー白内障手術における角膜切開の術後写真です。ともに大宮七里眼科で実際に手術した後に前眼部OCT器機、SS-1000 Casiaを使用して撮影したものです。左写真の円内のメスによる切開の断面は鈍角なのに対して、右写真の円内のレーザーによる切開では設定通り、しっかりと3段に角度のついた傷口となっているのがおわかりかと思います。

角膜は「膜」とはいっても0・5㎜程度のしっかりした厚みを持つ組織です。その厚みを利用し、レーザーによる切開では層の間で角度を変えて立体的に切っていることがわかると思います。レーザーでの切開では、角膜の途中の層で鋭角的に角度を変えることもできるのです。
フェムトセカンドレーザーで角膜を立体的に切開する技術には、大きな将来性があります。フェムトセカンドレーザーは白内障手術を行う以前からレーシックで広く使われていますが、現在では角膜移植にも応用されています。フェムトセカンドレーザーはとても正確な角度や深さで角膜を切ることができるので、術後に角膜の面と面がぴったりとふさがりやすい切開をすることができます。それを利用し、現在では、角膜のドナー側もレシピエント側もフェムトセカンドレーザーで切開することによって糸で縫合しない角膜移植が可能なほどです。

参考文献

Femtosecond Laser-Assisted Sutureless Anterior Lamellar Keratoplasty, Sonia H.Yoo et al, Ophthalmology, Volume 115, Issue 8, Pages 1303-1307

無縫合の角膜移植は移植をする側の角膜と、移植をされる側の土台の両方をほぼまったく同じ形にフェムトセカンドレーザーで切開して、角膜を土台にぴったりはめこむという手術方法です。たとえば日本古来の建築のように、柱や梁などを組み込むために穴やくぼみを開け、柱とくぼみがはまるように組み立てて、釘をほとんど使わなくても頑丈な建物ができるというような技術と似たイメージです。しかもこの論文では、そのようなフェムトセカンドレーザーを使用した無縫合の角膜移植後の患者さんの視力が、とても良好であるとしています。フェムトセカンドレーザーで縫合せずに角膜移植が可能であるということは、いかにフェムトセカンドレーザーが正確な大きさ、深さ、形に組織を切開できるかを象徴しています。

レーザー白内障手術の角膜切開の実際のOCT画像

写真はレーザー白内障手術の角膜切開の実際のOCT画像です。白い部分は角膜で、ピンク色のラインは予定の切開線です。この症例では3つの切開面で角膜を切開しています。レーザー白内障手術では、このような3段階での切開面でのパターンのほかにも、さまざまなパターンでの設定が可能です。
レーザー白内障手術では、事前に角膜の切開線の長さ、角度、深さ、位置を入力しておき、レーザー直前のOCTで個々の角膜のカーブや角度にあわせて切開線のラインを決定します。眼科医が望めば、レーザー白内障手術器機が提示した切開面をそのまま使用せず、画面上でクリックひとつで切開の長さや角度をその場で調整、変更することも可能です。私がレーザー白内障手術を執刀するときにも、症例によっては切開面の変更を画面上で行うことがあります。画面上でポイントをクリックすると、リアルタイムで変更された切開の各プレーンの長さが測定・表示されます。眼科医はその値を見ながら微調整ができます。このように、レーザー白内障手術はコンピューター画面上でも行うことができる手術でもあるのです。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

レーザー白内障手術機器とベリオン・システムの連携で
より正確な位置に傷口を作ることができる

ベリオンは白内障手術を正確に行うための、いくつかの革新的な機能を持っています。一番の主な機能は、手術中の患者さんの目の角度や位置を正確にガイドすることです。このような外科手術において術者のガイドをする器機をサージカル・ガイダンスといいます。
ベリオンは白内障手術前に、患者さんの目を高解像度のデジタル画像を1000枚以上も撮影し、その目に固有の強膜血管、輪部と虹彩の位置や特徴を捉えます。それぞれの眼に固有の特徴である血管の走行や虹彩模様の認証を行うことにより、眼科医が手術中にそのガイドを見て目の位置や角度を正確に確認することができます。
このようにデジタルで目の位置をマーキングすることをデジタルマーカーと言います。
ベリオンによるデジタルマーカーは、眼科医の見ている顕微鏡の患者さんの目の画像の上に、デジタルで解析した目の軸や位置などの画像を重ね合わせて表示することができます。しかもベリオンによるガイドは、最先端のデジタル技術により、患者さんの目が動いたり、眼科医が顕微鏡の倍率を変えると、それに合わせて自動的に変わります。これは素晴らしい画期的な機能です。ベリオンの示したガイドに合わせて手術を行うことにより、眼内レンズの固定の位置や乱視の軸だけでなく、手術で作る角膜の切開創の位置、水晶体前嚢切開の位置や半径まで、より正確に行うことができるのです。
白内障手術では眼内レンズを目の中に固定します。メガネもレンズの中央が一番よく見えるのと同様で、眼内レンズも目の中央の固定が理想的です。眼内レンズの位置は、手術後の見え方に重要で、とくに多焦点眼内レンズではわずかな位置のずれが見え方の低下につながります。

このベリオンが開発されたのは、乱視用の眼内レンズや多焦点眼内レンズのような、より付加価値の高い眼内レンズは、前嚢切開や眼内レンズの位置固定などについて、より高い精度が要求されるという背景から開発されました。つまりベリオンは、とくに乱視用の眼内レンズや多焦点眼内レンズのような精度の高い手術が要求される場合において、とくにその真価を発揮します。

ベリオンは眼科医の顕微鏡に画像を表示できるだけでなく、目の中の距離や角度の情報をレーザー白内障手術器機・レンズエックスに送ることができます。
レンズエックスはレーザーで角膜、水晶体前嚢を切開します。そのときに事前にベリオンに取り込んだ患者さんの目の特徴のデータをレンズエックスに入力し、レンズエックスの画面での目の画像と重ね合わせることにより、角膜切開や水晶体前嚢切開の位置や角度を正確に設定します。レンズエックスはベリオンと連携することにより、レーザー白内障手術を正確に行うことができるのです。
日本でも最先端の白内障手術を行っているいくつかの病院ではベリオンが採用されていますが、保険での請求ができないためにまだほとんど普及していません。

ベリオンによるデジタルマーカーは、レーザー白内障手術の傷口の位置などの精度を上げるだけでなく、患者さんの乱視を治すことにも大きく貢献するのです。

(山﨑健一朗・著「人生が変わる白内障手術」より抜粋・改定)

監修医師 山﨑 健一朗

院長紹介

院長資格

  • 日本眼科学会認定 眼科専門医
  • 日本で初めてフェムトセカンドレーザー白内障手術を開始
  • 2017年 著書「人生が変わる白内障手術」出版
  • 多焦点眼内レンズ使用症例を4,958件以上
  • フェムトセカンドレーザー白内障手術4,752件以上
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